牛価にかかわらず、昨年は完全に新型コロナウイルス感染症にほんろうされた1年となった。年初こそ順当な滑り出しとなったが、2月ごろに早くも暗雲が立ち込めた。まずは新型コロナに伴い、中国人観光客が激減。首都・東京都はもちろんだが、主要観光地である京都府、大阪府などをはじめ、近年のわが国の観光業は中国人観光客を中心としたインバウンド需要に依存しつつある環境だった。政府がインバウンドの拡大に注力していた分、その影響もきわめて大きくなった。
しかし、問題はこれにとどまらなかった。3月ごろには国内感染者も増え、4月には緊急事態宣言が発令され、外食産業は壊滅的な打撃を受けた。これに伴い国産牛枝肉相場は暴落。5月からは、外食産業ではテイクアウトやデリバリーの拡大にかじを切る。しかし、多くの店舗では、一定の客数は維持できても、売り上げの下落をカバーするだけの客単価が稼げなかった。
一方、量販店や食肉専門店は過去にない販売実績をたたき出した。店舗によっては2ケタ増となるなど、外食機会が減少したことで内食化傾向が一気に強まり、業績好調につながった。5月は東京市場の和牛A5等級月間平均が前月よりも回復したが、これは4月の相場安を受けて、小売事業者が交雑牛から和牛に切り替える動きを進めたため。低価格で和牛を提供できるというニーズに支えられて伸長した。
その後、行政による「和牛肉保管在庫支援緊急対策」や消費者向けキャンペーンの「GoToキャンペーン」などが奏功したほか、海外輸出も伸長。牛肉輸出は海外でのロックダウンなどによってレストラン関係の引き合いが激減したほか、そもそも物流がストップしてしまったこともあり、まったく先が見通せない状況だった。しかしながら6月の月間牛肉輸出量は446tで前年同月の340tを大幅に上回る実績を達成。その後、いずれの月も前月を上回る好ペースで輸出が伸びており、10月は646tで前年の369tの7割増だった。とくに香港、台湾などアジア圏への輸出が伸びている。日本と同様にインターネット通販での利用拡大や、正規ルートではないが中国向けの輸出が伸びているという話もきかれる(続きは食肉速報に掲載)
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