新型コロナウイルス感染症により、海外への牛肉輸出が大幅に減少したほか、外食産業が大きなダメージを受け、高値で推移していた牛枝肉相場は急落。いまだ見通しは不鮮明だ。このような中で下半期の牛価の推移を占いたい。
日本食肉流通センターの調査によると、和牛の販売先の50.7%が「スーパーマーケット」、13.5%が「専門小売店」、2.7%が「その他小売店」、1.4%が「惣菜・加工他」、25.0%が「外食」、2.0が「食品製造業」、2.0%が「加工その他」、2.7%が輸出となっている。今回のコロナで大きな影響を受けたのがちょうど4分の1にあたる25.0%を占める外食と2.7%の輸出だ。輸出が全体に占める割合は小さいが、輸出の多くはロイン系であるため、軽視できない。これら3割弱への影響が響き、相場は大幅にダウン。東京市場の4月のA5等級の月間相場はキロあたり2027円となった。
次に牛肉生産量をみていくと、和牛と畜頭数は近年、おおむね増加傾向が続いているが、ことし3月は前年同月比5.1%、4月11.1%減と大幅に減少。これはコロナによる急激な相場下落を受けて生産者による出荷抑制が図られたもので、相場が回復し始めた5月には1.7%増と増加に転じている。一時的にこうした要因がみられたが、おおむね増加傾向といってよいだろう。
下半期の見通しは、今後のコロナの影響に大きく左右されるためむずかしいが、いまある情報を頼りに推察していきたい。まず、この先の和牛のと畜頭数の見通しだが、これまでの生産傾向からみて和牛が微増、交雑牛、乳牛が減少することに変わりはない。昨年も和牛が増頭傾向だったことから、相場は軟調傾向だった。また、今回のコロナにおける重要なポイントは外食向けに使われていた高級部位であるロイン系在庫が大幅に荷余りしたということだ。行政の「和牛肉保管在庫支援緊急対策」により、保管維持コストは低減できているものの、問題は在庫の使い道だ。ゴールデンウイークや中元ギフト、旧盆商戦などで一定量は減らせたが、業者によってはそれでも例年の5〜10倍の在庫を抱えているとしている。この使途についてきき取りを行ったところ、多くが歳暮ギフトや年末商戦だと回答。年末商戦までは在庫を寝かせる考えだ。つまり、これらの在庫で年末を乗り切るのだとすれば、年末やそれ以前にまとめて手当てする必要がなくなる。また、ことしは今後、いつコロナで情勢が変化するか分からないため、いくら相場が安いとはいえども、必要数量以上を手当てするのはリスクが高い。また昨年は下落相場となっていた。ことしもコロナがなくても、相場調整期となっていた可能性も高く、そもそも上げ基調にはなかった。
これらから考えると、年内は、まとまった手当てが行われる見込みは少なく、年末においても大きな伸長を期待するのはむずかしいといえるだろう。生産者にとっては厳しい見通しとなったが、予想を上回って推移する可能性もある。
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