国内の飼養鶏における高病原性鳥インフルエンザは、2023年度のシーズン(23〜24年の秋冬)には10県で11事例が確認され、約85万6千羽が殺処分された。そのうち、肉用鶏農場での発生は3事例で、殺処分数は約6万3千羽だった。全国規模でみれば、過去最大となった22年シーズン(飼養鶏全体で約1771万羽が殺処分)と比較して甚大な被害とはならなかった。
24年の年始、1月の日経相場では生鮮モモがキロ当たり700円前後、ムネ380円前後と、モモが前年同月比で約100円安、ムネが約40円安。農水省の「食鳥市況」でみても、モモ729円(前年同月比10・9%安)、ムネ396円(7・5%安)と落ち着いたスタートを切った。
コロナ禍からの立ち直りと価格優位性から輸入鶏肉の需要も増しており、輸入量も前年を上回って推移したが、6月はブラジル産地の洪水もあり、14・4%減と落ち込んだ。
鳥インフルエンザの影響が少なかったことから、国内の鶏肉生産量は24年を通じておおむね前年を上回った。8月のみ前年割れとなっているのは、酷暑による増体不良などにより減産したためだ。また、9月に上陸した台風10号により、産地によっては物流の停滞、停電の被害などもみられた。
一方で、円安と飼料、資材、エネルギーなどの高騰から、生産、流通におけるコスト高が続いた。
海外からの研修・実習生を含め、生産現場の深刻な人手不足は続いており、年間を通じてハラミ、コニクなどの副産品の出荷量は正肉と比較して低調だった。
今年の鶏肉需給量についてはやや増加するものと予測する。人口が減少する中にあっても、05年に10・5㎏だった1人当たりの年間消費量(純食料ベース)については、24年に約14・4㎏と増加傾向にある。増加基調に加え、コロナ禍からの立ち直りで、インバウンドを含めた人の動きが活発化し、イベントがより高頻度となるため中食、外食での需要が増加する。また、他の畜種より安価という価格優位性と低脂肪高タンパクなヘルシーさもある。仮に景気が急減速するような局面があっても、また、俗に「胃袋が縮小する」といわれるような現況の高齢化による1人当たり摂取量の全体的な低下も、輸入も含めた鶏肉需給全体については追い風にこそなれ、逆風にはならない。
【国内生産】国内の生産については、生産大手などもおおむね前年並みを見込んでいる。「需要は上向いていても、産地の人手不足などもあり、急な増産はできず、順調にいって24年並み」としている。一方で高病原性鳥インフルエンザが24年末時点で22年シーズンに匹敵する件数発生しているため、1〜3月については24年に比べ微減と考える。
また、昨年8月に酷暑による増体不良などのために減産がみられたが、ことしも暑さ、台風のリスクについては起こり得ることとして試算し、8月は24年度並みとみる。
【輸入鶏肉】輸入量は増加すると考える。25年の為替動向については「1ドル150円前後で推移する」と分析する専門家も多く、そうであれば、輸入品の環境的には一時160円を超えた24年よりは若干良くなる。
また、中国が国産鶏肉の増産を図っている過程にあり、同国が不動産を引き金とした景気減速にあることも、輸入にとっては買い負ける可能性が低下するという意味で、日本のブラジル、タイにおける鶏肉調達に有利に働く。
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