長引く円安、それによる飼料やエネルギー価格の高止まり、社会情勢の動きに伴う輸入の遅れ—。さまざまな要因が生産、消費に影響を及ぼす中、2024年の豚肉相場は前年を下回る月もあったが、夏場をはじめ、基本的には前年超えの高値傾向が継続した。
年明けからの暖冬で豚の重量が増えやすかったり、一方で7〜8月は酷暑で出荷頭数が伸びにくかったりと、気温も豚価を変動させた。さらに、5月末以降は豚熱も相場に響き、多くの月は前年を超える高い価格での推移となった。
東京食肉市場の相場(「上」、税込み)を月ごとに振り返ると、昨年1月は491円(前年同月比39円安)と3年ぶりに500円を割った。年明けから暖冬が続き、出荷頭数は前年を上回り、発育も良く、生産量が多かった。高い気温が鍋物需要の伸び悩みを招くという側面もあった。
2月は594円(6円高)だった。通常は需要が低迷しやすい時期だが、前月比では100円を超える上昇をみせ、前年比でも高値。3月もそれほど生産量が減らず、相場は549円(25円安)と前年に比べて少し低下したが、平年比では高値だった。
4月は後半に入ると出荷頭数が減り始め、価格が上昇傾向になり、613円(51円高)。5月末には栃木県と岩手県で豚熱が発生。豚価は一気に高騰し、翌月以降にも影響は続いた。5月は714円(69円高)、6月は753円(53円高)と高い水準に。
7月に入ると気温上昇に伴って出荷頭数が減り、疾病や輸入の停滞もあったため、900円を超える日も。7月は831円(150円高)という大幅な上昇をみせ、酷暑が続く8月も764円(50円高)と高値を維持した。
9月は665円(34円安)。前月まで5万頭台あるいはそれ未満になることもあった全国と畜頭数は、6万頭台に戻り始めた。さらに円安が一時的に落ち着き、輸入品に需要がやや傾いた。
10月は、前年のと畜頭数が月平均7万頭に近かったのに対し、今年は6万頭台半ばにとどまり、相場は619円(61円高)で前年超え。11月は570円(51円高)、12月は637円(86円高)
食肉通信では24年11月下旬から12月中旬にかけて、「2025年の豚価アンケート」を実施した。
アンケートは記述形式で、25年の各月予想価格とその価格を決める要因、瞬間最高値・瞬間最安値とその時期、出荷動向、飼養動向、消費動向、輸入動向、そのほか社会情勢を踏まえた25年の豚肉輸入量や国産相場への影響、国内外での疾病、近年注目が集まるSDGsやアニマルウエルフェアについて、食肉業界の各関係者の意見を募った。
回答は計93通で、業種別でみると、生産関係(以下、生産)が15通、市場・センター関係(市場)が49通、加工・卸が15通、流通・小売・商社(流通)が14通という内訳だった。
このアンケートでの年間の全体平均予想は「632円」と、前年実績(650円)を下回った。
業種別の年間平均予想では生産が「632円」、市場が「624円」、卸が「649円」、流通も「649円」。最も高く予想しているのが卸および流通、最も低いのは市場だった。その差は25円と、業種ごとの差が少し開いている。
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