ことしの肉牛出荷頭数は、行政のクラスター事業などの成果もあり、和牛は増加が見込まれている。東日本大震災以後、和牛の供給不足から高値が続いていたこの数年の状態が少しずつ改善に向かっている。交雑牛も微増が見込まれているが、乳牛は産み分け技術の高まり、搾乳能力の向上などからことしも減少が見込まれる。流通面では、農水省が進める農畜産業振興機構事業の「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」が最終年度となる。部分肉ベースでキロあたり850円の販売促進奨励金が見込まれるほか、加工、輸送代の補助も行われる。昨年末も、それら冷凍保管肉を活用したキャンペーンや大型セール商品が販売されたが、ことしも同様の動きがみられるだろう。保管事業により流通が下支えされ、牛枝肉相場は一定水準を維持するとみられる。
輸入ビーフの状況は1月以降、需要の低下から相場が下がるとみられているが、慢性的な入船遅れは直近では解消の見込みがないため、当面は継続する見通し。このため相場は下落するとみられるが、大幅な下落はないとみられる。33年までTPPなどの関税の引き下げも行われるものの、それ以外の要因が大きく左右している中では、関税引き下げによる目にみえる価格の下落はないといえるだろう。このため輸入ビーフの代替需要として交雑牛や乳牛の引き合いが高まる。輸入内臓類も高値となっていることから、これらを精肉に切り替える動きもすでにみられている。
消費面では、21年は東京オリンピック需要に期待が集まったが、コロナ下で致し方ないことではあるものの、実需要にはほとんどつながらず、食肉業界としてはかなり残念な結末となった。関係者の中には、数年前から準備を行っていた企業も少なくなく、投資に見合った実績には至らなかったようだ(続きは食肉速報に掲載)
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