第45回食肉産業展(千葉県・幕張メッセで開催)の食肉情報セミナーで9日、独立行政法人家畜改良センターの入江正和理事長(写真)が「和牛における脂肪質と食味性」と題し講演。脂肪質やオレイン酸について、以前から知られている口溶けの良さだけでなく、新たに多汁性や風味にもかかわりがあることが判明してきたことなど、最新の知見を紹介した。それによると、和牛において脂肪交雑は価格や食味性に影響する重要な形質で、改良の結果、その向上が進み、現在黒毛和牛去勢の半分がA5となっている。そうした中、次の改良目標としてあげられるのが脂肪質。和牛の特徴は、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸(MUFA)含量が高いことであり、現場で迅速に光学測定が可能。食味との関係では、舌触り(融点)のみが注目されてきたが、多汁性(ジューシーさ)にも、脂肪酸は風味(うまみや香り、におい)にも関係し、食味すべてに影響することが明らかになってきた。
入江氏は多汁性について、肉を焼いたときに水分を保持する保水性という能力が重要であることを指摘。多汁性のある肉は保水性が高く、水分が多く残りジューシー。一方で多汁性のない肉は水分が抜けてパサパサとなる。しかし「和牛肉は脂肪含量が多いもので50%を超え、元来もっている水分が少ない。それなのになぜジューシーなのか。その理由は、保水性が高いこともあるが、やはり脂肪が組織の中でしっかりと残っており、それをかむことで、口中で脂肪が溶け、液汁性を感じさせるから。だから、和牛の多汁性、ジューシーさが感じられると皆さんが評価されるのは、脂肪の質が関係しているということになる」と説明した。
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