一昨年(2023年)の5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。この日以降がアフターコロナとして位置付けられたといっていいだろう。
そのアフターコロナ下である昨年、一昨年の食肉産業の動向は共に非常に厳しいものがあった。
諸物価の高騰に伴う節約志向の高まりが主な原因として考えられており、特に高級部位である和牛ロースの販売に苦戦した2年間となった。
この2年の中で顕著となった傾向は、どちらも年末に際しては和牛販売が好調に転じたこと。節約志向の中でも、年末やハレの日などの需要は強く、和牛販売の底支えとなっている。
しかし、一昨年の場合は、それまで低調だった荷動きが11月にいきなり活発化し、東京市場の和牛A5等級の月間加重平均価格のうち、12月相場だけが2,736円と、前年の22年の価格を48円上回った。
景気の良い話ではあったが、末端の販売はそこまでついてこなかったため、年明けまで在庫を抱える企業も散見された。このため、年末に高値で仕入れた牛肉の価格をソフトランディング(軟着陸)させたいという思惑もみられたことで、昨年1月相場も高値となり、2,595円と、前年同月を42円上回った。
しかし、2月以降、荷動きが改善しなかったことから、その後の価格は低迷し、従来であれば高値に転じる3月価格も2月価格を48円下回る2,530円となり、また特に大型連休前ということから上半期で最も高値になる4月さえも、3月価格を36円下回る2494円となった。
4月価格が3月価格を下回ったのは20年以来。20年は4月に新型コロナに関連して初めての緊急事態宣言が発出されたもの。昨年のように3月相場を下回るのは異例といえる。景況感の悪さや、在庫調整の動きが目にみえて表れた。
その後、5〜6月と消費が落ち込む時期であるため、そのまま相場は下降。中元需要や旧盆商戦で引き合いが強まる7月も2,353円と、前月から27円安となり、下降傾向が続いた。8月は2,302円と、なんとか2,300円台を保った。2,300円を割ったのは、やはりコロナが始まった20年で、それに近い水準まで下落したことになる。
そこから9月に入ると2,405円となり、前月からは103円高と、一気に100円上昇した。昨年は1月の価格をピークに8月まで一度も前月価格を上回ることがなかったが、9月になって初めて前月を上回った。
また、10月は2,471円で、引き続き前月を上回るとともに、相場の回復基調が鮮明となった。年末を前に値動きが安定してきたのは一昨年と同様の傾向で、今年においても同様の傾向が予測される。
昨年の和牛枝肉相場は、一昨年に続いて厳しさが鮮明になった年だった。
アフターコロナとなり、外食産業に人が戻り始めているものの、1回転目は集客できても21時以降の集客が以前のように入らなくなっており、売り上げが減少傾向にある。また、歓送迎会や忘年会などの法人利用が以前に比べて減少、あるいは小規模化していることで、大幅な売り上げが立ちづらくなっている。
こうした影響を受けて、帝国データバンクによると、昨年の焼き肉店の倒産件数は過去最高水準のペースだった。居酒屋業態の倒産も同様に過去最高水準だった(続きは食肉速報に掲載)
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