1月1日午後4時ごろ、石川県能登半島沖を震源地とする「令和6年能登半島地震」が発生し、能登半島では最大震度7の揺れを観測した。県内全域で震度4以上を観測したが、とくに揺れが大きかったのが志賀町、七尾市、珠洲市、輪島市、穴水町、能登町、中能登町など能登半島とその周辺エリアだ。地震発生直後から津波警報が発令され、10分後には一部地域で大津波警報に切り替わった。その後も余震が続き、1月10日9時現在、石川県の死者は200人以上、安否不明者は60人以上としている。政府発表ならびに各所へのきき取り状況について報告する。
農林水産省発表の農林水産関係の被害状況報告(1月10日7時現在)によると、石川県では、畜産農家で停電9件・断水46件(うち家畜への給水不能7件)、施設損壊40件(損壊に伴う家畜被害3件)、道路損傷30件(うち農場への出入り不可5件)
県施設(農業試験場および畜産試験場)のガラス破損・堆肥舎の一部破損・一部地盤陥没、放牧場の施設で一部破損、畜産センターで断水・停電・施設一部破損、食肉センターで一部損傷・地盤陥没(作業に支障なく1月8日からと畜開始)などが報告されている。石川県農林水産部によると、県内でとくに被害が大きいのは珠洲市、輪島市、能登町、穴水町など北部の能登半島エリア(奥能登)。この地域は石川県が有するブランド和牛「能登牛」の産地。同地では断水や停電のほか、地盤沈下、土砂崩れなどによる被害もみられており、県では農林漁業事業者向けの相談窓口を設け、支援に動き出している。
石川県食肉事業協同組合連合会では組合員の被害状況を確認中であるが、県内北部の能登半島エリアの組合員と一部連絡がとれていないほか、断水、停電などの被害が報告されている。
石川県金沢食肉公社では、8日からと畜場の稼働を再開している。施設では地震の揺れによって一部機器の破損がみられ、1月4〜6日のと畜作業を止めていた。同社では年間に6千頭程度の牛を処理し、このうち300頭を能登牛が占める。能登地域の被害状況も深刻ながら、道路にも被害が出ていることから、県外からの集荷影響も懸念される。こうした状況から、9日に実施予定だった能登牛のせりは中止に。22日に予定されている次回のせりも開催が不透明な状況。
金沢市で食肉卸売事業を営むサニーサイドに状況をきいたところ、工場の一部施設で配管の破損などの被害が発生したものの、建屋の被害は軽微であり、9日から通常営業を再開。ただ、能登町周辺に親類が居住して被災した従業員もいるそうだ。また、能登周辺の取引先については、当面の営業ができないことから、電気が止まっていない状況であれば返品にも対応。水などの支援物資を配送用トラックに積んで現地に向かったという。
目次