豚肉マーケット展望—頭数増も底堅い、円安で輸入環境厳しく

 異常ともいえることしの猛暑は、種付けや生育など肉豚出荷にも大きな影響を与えた。さらに九州で豚熱が発生したことにより、出荷の先行きに不透明感が増加した。一方、食品に限らずさまざまな品目が値上がりしていることで消費者の生活防衛意識がさらに強まり、牛肉が敬遠されている一方、豚肉消費は活発だ。秋冬の鍋物需要に向けて、スープ・タレメーカーでは豚肉・鶏肉を材料とした鍋メニューの提案が主体となっており、牛肉離れと豚・鶏肉需要増はさらに拍車をかけそうだ。
 9月に入っても厳しい暑さが続いていたが、肉豚に対する影響も非常に大きかった。猛暑による事故や増体の遅れがみられ、出荷をキャンセルするケースも頻発。さらに出荷された肉豚についても、例年に比べて小ぶりのものが多かった。加えて8月末には、佐賀県の養豚場で、九州では約30年ぶりに豚熱が発生。先行きへの不透明感も強まった。こうしたことから、例年8月下旬以降は徐々に軟調な展開となっていく枝肉相場も、ことしは下がることなく、高値相場を維持した。9月も2週連続で3連休があったことなどもあり、行楽需要も増加。東京食肉市場の豚枝肉相場の9月加重平均は699円と、700円に迫る高値をつけた。22年9月(644円)からは50円以上、21年9月(600円)からは実に約100円の大幅な上昇である。
 そうした中、10月に入ってからも残暑が継続していたが、スポーツの日の3連休ごろから、気温は急降下している。相場についても9月下旬に急落。ただ、その後は反発して600円前後で落ち着いた展開となり、大きくは崩れていない。農水省の発表した肉豚生産出荷予測(9月22日発表)によると、10月は145万頭と、前年同月比4%増、平年並みと予測している。現状では出荷頭数自体は大きく増加しているわけではないが、気温が下がったことで、今後は徐々に頭数が増加し、増体も良くなりそうだ。こうした中で量販店などでは、これまで異常ともいえる暑さの影響により秋冬向けの提案は非常に鈍かったが、鍋物商材など、一気に秋から冬に向けての提案が本格化。バラやカタロース、さらにモモなど、スライス品の引き合いが強まっている。

※当ページに掲載している記事はいずれも日刊「食肉速報」からの抜粋です。詳細は本紙でお読みいただけます。 >>「食肉速報」を今すぐ申し込む



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