畜産業、とりわけ肉用牛生産は、世界の食生活を豊かにし、高い栄養価・滋養効果によって人びとの健康維持に貢献してきた一方で、家畜の生産自体が「環境負荷の高い行為」だと昔から一部の団体などから指摘されてきた側面がある。「牛のゲップなど、家畜から排出される温室効果ガスは世界の温室効果ガスの約14%を占めており、それはすべての乗り物から排出される温室効果ガスと同等である」「牛を1㎏大きくするには7㎏の穀物飼料を給餌する必要がある」といった論に代表されるように、地球温暖化・環境破壊の諸悪の根源のように糾弾されることもあるほどだ。その論が正しいかはともかく、世界的にサステナブルの概念が提唱される中で、畜産業がこれまで以上に、「持続可能」を意識した生産性の高いビジネスモデルを構築する一方、環境に配慮した取り組みを行っていく必要があることは確かである。
そのために大型農場では、どのような取り組みを行っているのか。複数の国内の代表的な大型肉牛法人に「SDGs」への取り組みや、原料高に対応する効率的なビジネスモデル構築についてのきき取りを行った。
その中では、飼料高騰に対し、飼料会社から配合飼料の完成品を購入せずに、とうもろこしやふすまなど、単体で購入し、自社の「飼料工場」で配合することでコスト削減に努めることや、稲わらなどの粗飼料については、海外コンテナ船の遅延などにより手に入りづらくなっていた状況もあって、近隣地域の生産者から新たに稲わらを調達するなどの対策を実施。また、SDGsの高まりや化学肥料の価格高騰により、改めて有機肥料が注目を集めていることから、近隣農家に牛ふんたい肥を供給し、耕種農家が稲わらなどの粗飼料、飼料作物などを提供することで双方にメリットを生み出す「循環型農法」といわれる方法を採用し、「耕畜連携」の取り組みを強化していく企業は多い。
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