全国肉牛事業協同組合は17日付で、今年度から取り組む「肉用牛生産におけるGHG削減可視化システム構築事業」に関して、東京農業大学と共同実施契約を締結した。同事業はゲップ中のメタンを削減できる飼料給与や排せつ物の早期の好気性(微生物のエネルギー代謝において酸素を必要とする性質)発酵促進などの取り組みにおける温室効果ガス(GHG)削減の実態を科学的に把握し、可視化することなどにより、肉用牛生産者に対し明確な対応方向を提示できる仕組みを構築することを目的としている。
事業の実証牧場は家畜改良センター(福島県西郷村)、(株)ノベルズ音更農場(北海道音更町)、みらいファーム(株)志布志農場(伊藤ハムグループ協力会社、鹿児島県志布志市)の黒毛和種ついて、ルーメン(牛の第1胃)から発生するメタンを低減するカシューナッツ殻液(CNSL)である出光興産㈱のルミナップを給与し、「ウシルーメン発酵由来メタン排出量推定マニュアル(スニファー法)」により測定する。黒毛和種の測定は他団体を含めて初めて。東京農大は実証データを受けて学術的に解析し、英語の論文を作成する。
17日に都内で開かれた説明会で、肉事協の中林正悦理事長(写真右から3番目)は「われわれは、この事業を通じて、数字に基づく知見により、牛たちに代わって、地球上の人びとに理解と共感を求められる取り組みをしなければならないと考えた。今後は、東京農業大学に学術的な指導を仰ぎながら、関係者の協力を得て、生産者が具体的に取り組むべき方向を明らかにし、根拠が明確になったものから着実に実施し、2050年ゼロ・エミッション(環境、気候を混乱させる廃棄物を排出しない)に向けて肉用牛生産分野で貢献していきたい」と述べた。
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